遺言が必要な方、不要な方

遺言が必要な方、不要な方

遺言が必要な方

(1)お子様がいない夫婦
 お子様がおらず、両親・祖父母も亡くなっている夫に先立たれた妻の場合、法定相続人は妻だけでなく、夫の兄弟姉妹も含まれます。夫の兄弟姉妹の中で亡くなっている方がいるときには、その子(夫の甥姪)が法定相続人になります。
 夫名義の不動産があって夫の遺言書がない場合、その不動産を相続するためには、妻は夫の兄弟姉妹または甥姪と遺産分割協議をする必要があります。法定相続人である夫の兄弟姉妹・甥姪が総勢十数名という場合も珍しくありません。妻とは面識のない方々も含まれてくる可能性があります。その方々のうち、たった一人でも同意をしてもらえなければ、妻は夫の不動産をまるごと相続することはできません。いざという時にその不動産を売却して、施設に入るための資金にすることも難しくなります。
 夫が「家は妻に相続させる」という遺言書を書いてさえいれば、妻は家を相続できるのです。

※右の図は、当事務所で実際にご依頼をいただいた案件です。妻の預金を解約するために17名で遺産分割協議を行う必要がありました。相続人17名の居住地は全国に及んでいました。妻が遺言書を作っていれば、遺産分割協議は不要でした。
(2)法定相続人がいない方
 両親・祖父母がお亡くなりで、配偶者、子、兄弟姉妹がいない方には、法定相続人がいません。その場合、遺言書を書かなければ、自分の遺産は国のものになります。それで良いという方は、遺言書を作る必要がありません。しかし、友人や、お世話になった方、公益団体などに寄付したいという方は、遺言書を作成する必要があります。
(3)法定相続人以外に遺産をあげたい方
 法定相続人以外の方、たとえば孫、わが子の配偶者、お世話になった友人、または公益団体などに遺産を受け取ってほしい場合は、遺言書を作る必要があります。
(4)遺産を子どもたちへ均等に分けることが難しい場合
 相続財産に不動産があって、法定相続人が2人以上いるときには、その不動産をだれに相続させるでしょうか。
 配偶者がお元気であれば、配偶者へというケースが多いでしょう。
 配偶者がすでに亡くなっていて、子どもが2人以上いるときは、その不動産をだれに相続させるか検討が必要です。子ども全員に持ち家があって、自分が亡くなった後、不動産を売ってお金にして分けることが想定されていれば、遺言書を書く必要はないかもしれません。
 しかし、子どものうち1人が同居していて、その子に自宅を相続させたい場合などは、子どもたちの間で争いにならないように配慮した遺言書の作成が望ましいでしょう。
 子どもたちに不動産を共有させるという方法もありますが、不動産を売る予定がないのに共有することは、あまりおすすめできあせん。売却の自由が制限されたり、共有者が死亡した場合にその相続人が共有者となって権利関係が複雑化するおそれがあることなどが理由です。
(5)法定相続分とは異なる分け方をしたいとき
 遺言書がない場合、相続人全員による遺産分割協議によって遺産の分け方を決めます。相続人全員が合意すれば、どのように分けても良いのですが、民法が定める法定相続分に応じて分けることも多いと思います。また、相続人全員の意見がまとまらずに家庭裁判所での手続に移行したときも、特段の事情があると裁判所が認めなければ、結局は法定相続分に応じて分けることになります。
 法定相続分とは異なる比率で自分の遺産を分けたい場合、たとえば、自分の世話をしてくれた長女に多く遺産をあげたい場合、逆に、迷惑をかけられた子にあげる分を減らしたい場合などは、遺言書を書く必要があります。ただし、遺留分について注意が必要です。

遺言書の作成が不要な場合

(1)財産に不動産がなく、相続人らへ法定相続分通りに分けたいとき
 自分の財産は、分けやすい現金、預貯金、株式などで、分け方が難しい不動産は持っておらず、法定相続分の通りに相続人へ分けたいとお考えの場合は、遺言書を作成する必要はないでしょう。
(2)相続人が1名のとき
 自分の相続人が1名で、その相続人にすべての財産を渡したいときは、遺言書を作成する必要はないでしょう。
 ただし、自分の相続人のほうが先に亡くなり、その時に自分が認知症になっていたら遺言書は作れない場合があることには、ご留意ください(→上記「法定相続人がいない方」参照)。
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